花粉症の治療|アレルゲン免疫療法のしくみと保険

アレルギーをもってアレルギーを制す!
そんな考え方のもとに生まれたのが、アレルゲン免疫療法です。

別名、減感作療法とも呼ばれる方法で、従来の薬による対症療法とは異なり、アレルギーを根治する可能性を秘めています。
アレルゲン免疫療法のしくみについて詳しく見てみましょう。

アレルゲン免疫療法とは何か

アレルギー症状は、アレルギーのもとである「アレルゲン」に、体が過剰反応することで発症します。
アレルゲン免疫療法は、アレルゲンを少量ずつ体内に投与することで、体をアレルゲンに慣らしてしていくものです。

アレルゲンに対する抵抗力を身につけた体は、アレルギー症状を和らげ、対症療法の薬を減量させることが可能になります。
また、ケースは少ないものの、症状を完治させる例も報告されています。

現在のところ、アレルゲン免疫療法には、「皮下免疫療法」と「舌下免疫療法」の2つが存在します。
皮下免疫療法は、アレルゲンを皮下に注射して行うもので、病院でのみ施行されます。
そのため、治療開始当初は、週に1~2回ほどの通院が必要になる方法です。

舌下免疫療法は、舌の下に治療薬を置いて行うもので、1回目の通院を除けば自宅で治療することが可能な方法です。
どちらの免疫療法でも、以下のような注意点があります。

  • 約3~5年という長期間の治療が必要
  • 治療時に局所的なアレルギー反応が出る恐れがある
  • 稀にアナフィラキシーなどの重篤な症状を発症する可能性がある

免疫療法を施行するには、以上のことに注意しながら、服用法や副作用などに対する理解を深めていく必要があります。
また、根気よく続けるための、本人の意思が重要となります。

アレルゲン免疫療法のしくみとは

アレルゲン免疫療法のしくみは、研究開始から100年以上たった現在でも、完全には解明されてはいません。
有力な仮説としては、次のようなものがあります。

くしゃみや鼻水、鼻づまりといった、アレルギー性鼻炎の症状は、体内に侵入してきた抗原が原因で起こると考えられています。
スギ花粉やダニといった抗原を、体内の免疫細胞が感知すると、それぞれの抗原に対する「特異的IgE抗体」を生成し始めます。

スギ花粉だけの「特異的IgE抗体」、ダニだけの「特異的IgE抗体」と、抗原の種類だけ生成されるのです。
例えば、スギ花粉に対する抗体であった場合、スギ花粉を吸い込んだときだけに反応するようになっています。

体内の特異的IgE抗体は、マスト細胞という細胞とセットになって存在しています。
そして体内に入り込んできた抗原は、IgE抗体に吸着していきます。
この接触が引き金となり、アレルギー反応が起こってしまうのです。

IgE抗体と共に存在しているマスト細胞は、抗原とIgE抗体との接触と同時に破裂して、ロイコトリエンやヒスタミンといった科学伝達物質を撒き散らしていきます。
くしゃみや鼻水といったアレルギー性鼻炎の症状は、これらの伝達物資によって引き起こされます。

しかし、アレルゲン免疫療法で少量ずつの抗原を体に慣れさせていくと、特異的IgE抗体が生成されなくなります。
変わりに、IgG抗体と呼ばれる、別の抗体が生成されるようになるのです。

すると、抗原が特異的IgE抗体と接触することがなくなるため、アレルギー反応が発生しないことになります。
全く別の抗体と置き換えることで、アレルギーに強い体にしていくんですね。

花粉症の治療|舌下免疫療法の効果と副作用 まとめ

アレルゲン免疫療法は、保険が適応される治療法です。
長期的な計画になりますが、根本的なアレルギー治療を願う方には、一考の価値があるかと思われます。

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