列車往来危険罪|線路に置き石で死刑または無期懲役

線路に石を置く子供の映像を見たことはありませんか?
子供の頃みた映画やドラマでそんなシーンがあったのを覚えています。
なんていう映画だったかは覚えていませんが、最初にみたと思われる映像は数人の子供が楽しそうに無邪気に遊んでいるシーンで悪戯として置き石をしていました。
数年たったのちに同じような置き石のシーンでしたが、ひとりのさみしげな子供がなにかむしゃくしゃして石を置いていたのを覚えています。

実際、現代でも線路に置き石をする子供や学生が後を絶ちません。
なぜかニュースなどで周期的に見るのも線路の石を置くことが犯罪で、家族を巻き込んで大変なことになるということを子供たちが知らないからではないでしょうか。
線路に置き石をする悪戯は「列車往来危険罪」といって非常に重い刑が課されています。

また、最近では子供の悪戯だけでなく、カラスによる線路の置き石などもみられるようになりました。
これもまた、時代なのかもしれません。

私たち大人は置き石をすることはないでしょうが、線路の置き石同様に列車往来危険罪に問われることもあります。
それは踏切内で自動車などが立ち往生した時です。
何らかの事情で電車の運行を妨げた場合は列車往来危険罪が適応され、2年以上の懲役が課せられ、鉄道会社からは多額の損害賠償金を請求されます。

電車の運行を妨げると「ただの悪戯」では済まないのです。
もし、その悪戯で電車が脱線し、多くのけが人や死亡者が出た場合は、膨大な損害賠償金により「人生が終了する」といっても過言ではありません。

列車往来危険罪

線路

多くの乗客を乗せる乗り物の中で最も身近なのが電車でしょう。
電車は脱線などの事故が起こると多くの乗客の身の危険、さらには人命に関わります。
このため、鉄道会社は日々安全な運行を心がけていますが、「電車の脱線、転覆、衝突等が生じるおそれのある状態」の危険行為を犯した者は列車往来危険罪が適応され逮捕されます。
これは刑法第125条で規定されています。

「電車の脱線、転覆、衝突等が生じるおそれのある状態」で代表的な危険行為が線路の置き石です。
また、こうもあります「鉄道もしくはその標識を損壊し、またはその他の方法により、汽車または電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する」
線路の置き石は「その他の方法」に当てはまりますが、「鉄道もしくはその標識」とあり、電車本体だけでなく往来に必要なものを破損させることで危険を生じさせた場合も適応されます。
「鉄道もしくはその標識」とは電車の車両本体だけでなく、線路や枕木、信号、踏切、標識その全ての設備を含みます。

また、物理的な損壊はなくても信号や標識にテープを貼ったり塗装などをして見えなくなった場合も当てはまります。
線路に立ち入って電車の運行を妨げた場合も「その他の方法」に当てはまり、列車往来危険罪により重い罪が課せられます。

列車往来危険罪の重い罰則

非常に罪が重いというのが列車往来危険罪の特徴のひとつと言っていいでしょう。
多くの人命に関わるのですから当然ともいえます。

列車往来危険罪は「2年以上の有期懲役に処する」とありますが、道路や橋の妨害に適応する「往来妨害罪」の「2年以下の懲役または20万円以下の罰金」と比べてみれば前者の罪が非常に重いことがわかります。

重いのは刑罰だけではありません。
車両本体や鉄道の往来に関わる設備を破損させた場合は多額の損害賠償金を支払わなくてはなりません。
また、電車の遅延により乗客の振り替え輸送などにかかった費用も損害賠償金に組み込まれます。
鉄道会社はこういった危険行為が起こらないためにも高額の損害賠償金を提示し、裁判をしても一歩も引きません。
⇒ 損害賠償金の事例については別の記事で

往来危険汽車等転覆・破壊罪

たかが線路の置き石と侮ってはなりません。
危険行為により重大な結果が生じた場合、列車往来危険罪よりも重い罪が適応される場合もあります。
それが「往来危険汽車等転覆・破壊罪」です。

往来危険汽車等転覆・破壊罪は、「無期または3年以上の懲役」と規定されていますが、多くのけが人や死亡者が出た場合は「死刑または無期懲役」に処せられることもあります。

つまり、線路の置き石によって、もし列車が脱線し、死者が出たような場合は「死刑または無期懲役」という重い刑罰が処せられる可能性があるということです。

死刑のイメージ

往来危険罪と合わせて問われる住居侵入罪

電車の写真を撮るのを趣味としている「撮り鉄」と呼ばれる方も多いと思いますが、写真撮影がエスカレートして線路の近くまで侵入してしまう事件もあります。
この場合も電車の運行を妨げる行為とみなされた場合、列車往来危険罪に問われますが、線路内は鉄道会社の敷地ですので同時に住居侵入罪も合わせて適応されることが多いようです。

線路内は立ち入り禁止になっていますから絶対に侵入しないでください。

列車往来危険罪|線路に置き石で死刑または無期懲役 まとめ

  • 列車往来危険罪は、2年以上の有期懲役
  • 車両本体の損壊だけでなく線路の置き石、線路や枕木、信号、踏切、標識など全ての設備を含む
  • 物理的な損壊ではなく、信号や標識にテープを貼ったり塗装などをして見えなくなった場合も含む
  • 線路に立ち入って電車の運行を妨げた場合は住居侵入罪も合わせて適応される
  • けが人や死亡者が出た場合は往来危険汽車等転覆・破壊罪により「死刑または無期懲役」となる可能性もある
  • 多額の損害賠償金を支払わなくてはならない

このように重い刑罰を定めることで、こういった危険行為を行わせないようにする予防策にもなっているようです。

鉄道会社も同様に損害賠償金の大きさを予防策としている傾向がありますが、これに対して裁判をしても無駄ともいえます。
なぜなら、中学生5人で線路に置き石をしたが、内1人は見ていただけだと主張するも、最終的には損害賠償金の支払いを命じられたケースもあるからです。

⇒ 線路の置石や踏切での立ち往生|損害賠償事例

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