マーガリン|摂取量と体への影響

マーガリンといえば、バターよりも脂肪分が少なく、低コストというイメージがありますね。
しかし、バターよりも健康に悪いという評判も、定着しつつあります。
マーガリンは植物由来なのだから、健康的なイメージがつきそうなのに不思議ですよね。

マーガリンとは何なのか、健康に悪いといわれる理由は何か、明らかにしてみましょう。

 

マーガリンとは何か

マーガリン

マーガリンとは、主に植物性の油脂を原料に、バターの代替品として生まれた加工食品です。
「人造バター」という、インパクトのある名称で呼ばれていた時代もありました。
植物由来のバターの代替品は、含有する油脂量によって2つに分類されます。

油脂量が80%以上のものは「マーガリン」、80%以下のものは「ファットスプレッド」と呼ばれます。
スプレッドとは、食用の塗りもののことを意味します。
じつは、日本で販売されているマーガリンの大部分は、油脂の含有率からいうと「ファットスプレッド」なんです。
含有率が多くても少なくても、「マーガリン」と、一括りにしているんですね。

味については、コクや風味は、やはりバターに劣ります。
しかし、バターのこってりとした感じが苦手な人は、マーガリンのあっさりした味を好みます。
また、固くて形状を保ちやすいバターと比べて、柔らかくなめらかであるため、何かに塗ったり練り込んだりするのが容易です。

 

マーガリンに含まれている成分は

マーガリンの歴史は、1800年代の前半に「マルガリン酸」という成分が発見されたことから始まります。
これが、マーガリンの語源となっているんですね。
バターの代用品として開発されるようになったのは、1800年も後半に入ってからのことです。

現在のマーガリンは、大豆油や菜種油、コーン油といった植物性の油脂を主原料にしています。
植物性油は、液体ですが、マーガリンとして常温で個体となるよう、不飽和脂肪酸に水素添加をして加工しています。
この過程で、マーガリンの成分に「トランス脂肪酸」というものが発生します。

この成分は、自然界には、ほとんど存在しないものだと言われています。
また、あえて食品から摂る必要がないとも考えられているものです。
そのため、多量に摂取してしまうと、健康被害が生じてしまう可能性が高いとも考えられています。
加工する過程で必ず発生してしまうトランス脂肪酸は、一般的なマーガリンに7%、ファットスプレッドに5%ほど含まれています。

世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取は、総エネルギー量の1%未満であることが望ましいとしています。
そのため、健康問題に敏感な欧米諸国では、含有量の規制や表示が義務づけられるようになりました。
その影響から、日本でも問題視され、敬遠されるようになったのです。

開発された当初は、マーガリンはバターよりも健康的と捉えられていました。
しかし、トランス脂肪酸の危険性がアピールされるにつれて、健康に悪いというイメージが浸透するようになりました。

 

トランス脂肪酸がもたらす身体への影響は

WHOが警鐘を鳴らすほど、健康に害を与える可能性が高い、トランス脂肪酸。
具体的には、どのような問題が生じると言われているのでしょうか。
大量摂取がもたらす、身体への影響についてまとめてみました。

悪玉コレステロールが増える

トランス脂肪酸を含む食品を、大量に摂取した場合、血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加します。
また、善玉(HDL)コレステロールも減少してしまいます。

体内における悪玉コレステロールは、体中の血管のすみずみまでコレステロールを運ぶ役割を果たすものです。
適切な量であれば、身体の機能を発揮するうえで必要不可欠なのですが、血中に含まれる悪玉コレステロールが多くなると、動脈硬化を引き起こす要因となってしまいます。

善玉コレステロールは、血中の余分なコレステロールを回収して、肝臓に運ぶ働きをするものです。
善玉コレステロールが減少すると、血管の掃除ができなくなり、動脈硬化を予防することが難しくなってしまいます。

動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気を誘発してしまいます。
マーガリンなどのトランス脂肪酸が多い食品は、WHOが指定する値を越えないように、摂取量に注意するようにしましょう。

高血圧や高血糖を招く

トランス脂肪酸のとりすぎは、血液中の中性脂肪を上昇させる要因となります。
血液中に中性脂肪が増えるということは、血が油のように、ドロリとしてしまうということです。
血液は体内を巡る必要がありますが、サラサラの状態と比べると、流れが停滞しやすくなります。

血液を体中に行きわたらせるためには、より大きな力を必要とします。
ドロリと重い血液を巡らせるために、血圧は高くなっていくのです。

体内で増えすぎた中性脂肪は、内蔵脂肪として蓄積していくことになります。
その結果、身体がインスリン抵抗をおこし、血糖値までもが上昇しやすくなってしまいます。
高血圧も高血糖も、さまざまな病気を誘発するので、できるだけ避けるようにしたいものです。

伝達神経に影響する可能性

食品から摂取したトランス脂肪酸は、脳の伝達神経を構成する材料としても利用されます。
しかし、脂肪酸で構成された伝達神経は、機能が変形してしまう可能性があると指摘されています。

多量な摂取を続けると、情緒が不安定になったり、うつ症状が見られたりします。
また、ADHDや集中障害などが低下する可能性もあります。
子どもの場合、脳が発達途上なので、とくに摂取量には注意しておきたいですね。

アレルギーも誘発させる

食品を加工する過程で生まれたトランス脂肪酸は、天然のものとは構造が異なります。
そのため、腸壁や皮膚の細胞膜に隙間を作ってしまうのです。
隙間があるということは、有害なものが、身体に入り込む場所ができてしまうことになります。

腸内に有害なものが入り込むと、環境が乱れ、免疫力の低下を招きます。
アトピー性皮膚炎などの疾患は、腸内環境の乱れが原因で起こるものがあります。
また、細胞膜の隙間に有害なものが入りこむと、喘息やアレルギー性鼻炎を引き起こしやすくなってしまうと考えられています。

実際に、トランス脂肪酸の摂取量が多いほど、体内で炎症が生じていることを示す炎症因子が高くなるというデータもあります。
炎症因子は、アトピーやアレルギーに悪影響を及ぼすものなので、トランス脂肪酸との関係が垣間見えますね。

 

マーガリン摂取量の目安は

健康面を考えると、トランス脂肪酸を摂取するのは、控えた方が良いことが分かりました。
世界保健機関(WHO)が、トランス脂肪酸の摂取量について、「総エネルギー量の1%未満」であることが望ましいとしていることは前述しましたね。

では、具体的に、どれぐらいの量のマーガリンを摂取すると、WHOの基準を上回ってしまうのでしょうか。
健康的な食生活を送るためには、絶対に抑えておきたいポイントです。
日本人が1日あたりに必要とする摂取カロリーは、成人男性で約2,700kcal、成人女性で約2,000kcalと言われています。

そうすると、男性で約27kcal、女性で約20kcalの摂取が目安となりますね。
これは、トランス脂肪酸2gに該当します。つまり、1日あたり2g以内に抑えておけばセーフだということです。

しかし、日本ではトランス脂肪酸の含有量は、ラベル表示されていません。
欧米とは異なり、厳格な表示義務が課せられていないことが理由です。
そのため、市販されているマーガリンに、どのくらいのトランス脂肪酸が含まれているのかが分からないのです。

ただ、最も含有量が多いと考えられているマーガリンは、10gに0.9gのトランス脂肪酸が含まれているようです。
最低限の摂取量にするのであれば、1日に口にするマーガリンは、20gが限界だということになりますね。
しかし、マーガリンそのものを口にしなくても、マーガリンを原料とした食品は、ファストフード店やコンビニなどでもありふれています。

一概に、パンにマーガリンは塗らないから大丈夫!とは言えないため、知らないうちに間接的な摂取量が増えている可能性もあるのです。

 

水素添加油脂を使わないマーガリンも誕生

マーガリンのトランス脂肪酸は、水素添加で加工することで発生します。
2018年に入ってからは、水素添加油脂を使用しないマーガリンが誕生し、主流となりつつあります。
スーパーなどで、大手メーカーが、大々的に宣伝しているのを見かけた記憶はありませんか?

「マーガリン=トランス脂肪酸」というマイナスのイメージが、定着しつつある現状に、メーカーも危機感を覚えたのでしょうか。
現在市販されているものの中には、10gあたりのトランス脂肪酸を、0.1gまでにカットした製品も見られます。
単純に考えると、パンに塗るマーガリンだけであれば、従来の9倍ほど食べても大丈夫になったということですね。

しかし、「これで健康的になった!」とは言い切れない側面もあります。
トランス脂肪酸と同じように、注意しなければいけない成分に、飽和脂肪酸というものがあります。
こちらも悪玉コレステロールとの関連があり、摂りすぎることで、動脈硬化などの病気を招く可能性があります。

悪いことに、マーガリンを加工する過程で、トランス脂肪酸を減らすと、飽和脂肪酸が増えるという結果につながってしまうのです。
健康面をアピールしようと、メーカー側も加工に工夫をしたのでしょうが、皮肉な結果となってしまったのかもしれませんね。

ただし、日本人の食生活は、欧米とは異なり、脂肪酸の摂取量が少ないとも言われています。
トランス脂肪酸の影響を抑えるという、リノール酸の摂取も多いため、大きく悩む必要はないという見方もあるのです。

普段から脂肪分の多い食生活を送っているのでなければ、ある程度は気にせずに、マーガリンの美味しさを楽しむのも有りかもしれません。
極端な話、特定のものを大量に食べ続ける生活をしない限り、心配はいらないのではないでしょうか。

 

マーガリン|摂取量と体への影響 まとめ

健康への害が心配される、マーガリンのトランス脂肪酸ですが、加工の過程で減らしたからと言って健康に直結するものでもなさそうです。
また、間接的にマーガリンを摂取している可能性もあるので、脂肪分の多い食生活に注意しておくと良いかもしれませんね。

日本の基本的な食生活であれば、不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸の摂取量も多くならないようです。
まずは、毎日の食事を見つめ直すことから始めてみるのは、いかがでしょうか。

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