ネギ【葱】|禅宗における禁葷食。強壮作用が煩悩を増長する?

ネギは、禅宗における禁葷食(食べてはいけない食べ物)の中での五葷(ニラ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ハジカミ〈ショウガ、山椒〉)の一つに相当します。

これらを食べることで煩悩(特に女色への)が高まるとされ、精進食では食べることを禁じられています。

煩悩云々は定かではありませんが、ネギを食べれば「ネギ臭い」口臭が後々続きますし、僧堂(修行場)での坐禅や読経の際、ネギ臭さに気を取られて精神修養が進まないということは十分あり得えます。

ネギ科ネギ属の野菜であるネギの原産地は中国西部といわれています。

日本には、朝鮮半島を経て渡来したとされます。

ネギの薬効は昔から知られていたようで、江戸時代の学者「貝原益軒」の著書「大和本草」には、「ネギを死人の鼻や耳に入れると甦る」と記述されているそうです。

さすがに甦りまでは行きませんが、今でもネギは風邪を引いた時や体調不良の際に用いられますよね。

祭りの神輿や、橋の欄干飾り、神社や寺院の階段、お守り(厄除け)根付などに擬宝珠(ぎぼし)が付いているのをよく見かけることでしょう。

擬宝珠の起源には諸説ありますが、その一つに「ネギ特有のネギ臭さが魔除けになるため、ネギの形を模倣して魔除け目的で使われている」とする説があります。

ネギを含むことわざには……

「鴨がネギを背負ってやって来る」
→鴨がネギを背負ってくれば、労せず鴨鍋ができるように、好都合が重なり、更に都合が良い状況になる喩え。

「倹約とケチは水仙とネギ」
→倹約とケチは、ネギと水仙のように全く違うことの喩え。水仙とネギは、見た目は似ているかもしれないが、水仙は食べると毒であり、ネギは食べると体に良い。

上記のことわざのように、2016年、兵庫県尼崎市で水仙による食中毒事件が起きています。

プランターに植えてあった水仙をネギだと思い込み、昼食に使用したところ、10人が吐き気などの症状を訴えました。

ねぎ坊主

幸い、全員が軽症で済みましたが、水仙は全草が有毒で、特に球根に毒成分が多く含まれています。

致死量は10g。

食べると吐き気、下痢、発汗、頭痛などの中毒症状を引き起こします。

見る人が見れば、「ネギと水仙の見た目の形状は明らかに違う!」そうですが、それでも、自宅の家庭菜園などで水仙とネギを近くに植えておいたのを見間違えて食べてしまう、などの中毒事故が多数報告されています。

 

食材データ

種類:葉菜類
旬の季節:

主な効能

強壮作用
利尿、去痰、発汗作用

 

栄養成分

ネギ

古書(おそらく「日本書紀」)に、「葱は気の義なり。根を賞するにより根葱という」と記されているネギ。

「ネギは、人の活力源となる『気』を高めるのに良い。ネギの古名は『き(葱)』なので、葱(き)の根の部分を重用して食用とするところから、『根葱』という」

とまあ……こういった意味合いではないでしょうか。

昔から、ネギには気を充実して高める作用がある、と認識されてきました。

食材により、ネギ臭さ強度に違いはあるものの、ネギを始め、タマネギ、ニンニク等のネギ属(学名:Allium )は、その学名からアリウム属とも呼ばれます。

alliumはラテン語でニンニクの意味です。

料理のアクセントに使う馴染み深い香辛料としても重用されます。

アリウム属の野菜には、「アリイン(硫黄を含むアミノ酸の一種)」が含まれています。

アリインには、

  • 疲労回復効果 →滋養強壮、スタミナを生み出す。体を温めて鼻水を出す、発汗作用など
  • 血液をサラサラにする効果 →動脈硬化予防など
  • 生活習慣病予防効果 →活性酸素を抑制し、老化を防ぐ
  • 抗菌・抗カビ効果 →「アリイン」が分解され、「アリシン」が発生します。「アリシン」には腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの原因菌の抑制や、カビ菌の生育抑制効果がありますので、食中毒を防ぐ役割も担います。
    抗菌作用により、喉の痛みを鎮め、去痰に働きかけます。

漢方においては駆虫作用もあるとされます。

以上のことにより、アリウム属の野菜であるネギを食べれば、風邪などの改善や予防に効果的です。

体調が整い、新陳代謝が上手く行くことで、体内老廃物の排除や解毒作用、消炎作用なども期待できるのです。

ネギの緑色の部分に含まれているβ-カロテンが体内でビタミンAに変わります。

ビタミンAは皮膚を正常に維持する働きがあります。

ビタミンB2やビタミンCなどのビタミン群、カルシウム、カリウム、リン、マンガンなどのミネラル群が含まれ、ネギオール、食物繊維も豊富です。

ビタミンCは免疫力を高めてくれますし、ネギの白い部分に含まれるネギオールは抗菌作用があり、体の抵抗力を高めてくれます。

「止血のビタミン」とも呼ばれるビタミンKの成分が高く、骨の健康を保つ効果もあります。

前述しましたが、ネギは「五葷」の一つ。

酒同様、禅宗の山門をくぐることを禁じられています。

 

特徴

ネギは年間を通して入手可能な食材ですが、旬は冬です。

購入の際は、緑と白の境目部分がはっきりして、全体に張りがある(弾力がある)ものが良品です。

保存の際、ネギ丸ごと一本の場合は新聞紙に包み、風通しの良い涼しい所に置きましょう。

余ったらポリ袋に入れて冷蔵保存や冷凍保存しておきましょう。

ネギの茎は、根から上1cmまでで、茎の上から全部は葉なのです。

つまり、食材に用いられている白い部分も青い部分も「葉」なのです。

ネギの花は坊主頭や連想させるので、葱坊主と呼ばれています。

 

種類

九条ネギ
九条ネギ

中国、日本、韓国、イラクなどが世界の生産地です。

国内の生産地では、埼玉県、千葉県、茨城県の3県が有名です。

利用部位により、根深ネギ(長ネギ)、葉ネギ(青ネギ)とに分けられます。

根深ネギの種類には、「深谷ネギ」、「下仁田ネギ」、「千住ネギ」、「赤ネギ」、「リーキ」、「曲がりネギ」などがあります。

葉ネギの種類には、「難波ネギ」、「九条ネギ」などがあります。

 

レシピ

ネギの味噌汁

風邪の引き始めに飲むと、身体を温め、ネギの抗菌作用が喉の痛みなどの症状を緩和してくれる。

風邪で食欲が無いときにもネギの味噌汁ならすんなりと飲めそう。

 

さらしネギのソースがけ

「汚れっちまった悲しみに…」と詠んだ詩人「中原中也」が愛したネギレシピ。

刻んだネギを水にさらして皿に盛りつけ、ソースをかけるだけ!

美味しいか美味しくないかは……試してみないとわからない。

 

ネギ【葱】 禅宗における禁葷食。強壮作用が煩悩を増長する? まとめ

アリウム属の野菜であるネギには、「アリイン(硫黄を含むアミノ酸の一種)」が含まれています。

うどんやそばなどの香辛料に使うだけでなく、料理のアクセントとして欠かせない食材です。

アリインには、滋養強壮効果、血をサラサラにする効果、身体を温める効果、抗菌効果などがあり、疲労回復や、動脈硬化などを引き起こす恐れのある生活習慣病の予防、肩凝りや冷え性を直したい方、風邪の予防や風邪症状の緩和などに効果があります。

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