ウメボシ【梅干】|「1日1粒の梅干で医者要らず」とも言われる

梅は中国が原産で、その果実は「三毒(食べ物、水、血の毒)を絶つ」とも言われます。

梅干の歴史は古く、日本に伝わったのは奈良時代。

遣唐使の「小野妹子」が中国から持ちったのが始まりとされます。

中国では梅の実を燻製・乾燥し、腹痛や解熱などの漢方薬として用いるのが一般的です。

日本では薬として用いるほか、梅の実を塩に漬け込み柔らかくして食べやすくし、食用の「梅干」としても定着させました。

平安中期の書物には、塩漬けされた梅干とコブ入り茶を食したことで村上天皇の病が平癒したという記述があるそうです。

特に、申年に作った梅干は縁起が良く、食べると健康長寿になると言われます。

村上天皇が申年に作った梅干で病が治癒したことがその由来です。

梅干の種の中身を「仁」と言いますが、別の呼び名で「天神様」とも呼ばれます。

この呼び名は、菅原道真公の飛梅伝説に由来しています。

幼い頃から梅の花を愛でられていた道真公の御所は「白梅御殿」、別邸は「紅梅御殿」と呼ばれ、それら邸内にはたくさんの梅が植えられていたそうです。

天皇に重用され、政治にも関与する立場であった道真公を快く思わぬ左大臣「藤原時平」らの工作により、道真公は右大臣の職を解任され、九州の大宰府に左遷されてしまいます。

その際、自邸の梅の木との別れを惜しんで詠んだ歌が、

「こちふかば にほひおこせよ梅の花 あるじなしとて春をわするな」

であり、この梅の木が去って行った道真公を慕い、彼を追って九州の大宰府まで飛んでいったという「飛梅伝説」が伝えられています。

 

食材データ

種類:加工食品
旬の季節:年中

主な効能

食欲増進
疲労回復
殺菌作用
風邪、二日酔いの改善

 

栄養成分

梅干

梅の果肉には、クエン酸、リンゴ酸、ピクリン酸、カテキン酸、コハク酸、酒石酸などの様々な有機酸が含まれており、強い殺菌作用や抗菌作用を持っています。

だ液や胃液の分泌を促進し、胃腸の調子を整え、食欲を増進させ、消化促進に働きかけます。

クエン酸は梅干の酸味成分です。

筋肉中につくられる疲労物質「乳酸」の発生を抑え、速やかな疲労回復を促す効果があります。

昭和期には、白い旗に見立てた白飯の中央に赤い梅干を埋め込んだ弁当を「日の丸弁当」と呼び、当時の弁当の定番でした。

保存技術の優れていなかった時代に、梅干が有する殺菌・抗菌効果を見込んで弁当に入れたという理由もあるでしょう。

ですが、1粒を中央に埋め込んだだけでは、残念ながら、梅干周囲にしか効果は期待できません。

「三毒を断つ」と言われる梅の果実は、「食べ物の毒」「水の毒」「血の毒」に効くとされます。

天然の有機酸クエン酸を始め、ミネラルやビタミン群も含んでいます。

梅の果実を梅干にすれば、強力な防腐作用を持つ「ベンズアルデヒド」が生成され、食べて体内に入り分解されると、「安息香酸」という成分に変化します。

この安息香酸という成分が食中毒の防止、二日酔いの改善に効果的で、解熱などの風邪症状にも効くそうです。

この効果を見込んで、明治10年から20年代にかけて全国的に流行したコレラや赤痢の予防や治療に梅干が用いられたそうです。

伝統的製法で作られた梅干は、土蔵などの保管環境では腐らず、100年前の梅干でも食べられます。

長期保存が効くため、日清戦争や日露戦争の前線兵士が梅干を携行糧食として携えました。

「1日1粒の梅干で医者要らず」とも言われ、梅干を食べることで生活習慣病の予防や改善につながります。

但し、胃酸過多の人は注意が必要です。

更に、古来の製法で作られた梅干は塩分が多いので、食べ過ぎないことが健康の秘訣でしょう。

勿論、減塩調味を施した「調味梅干」を食べるという選択肢もあります。

「風邪の初期症状に、黒焼きした梅干2粒を湯のみに入れ、熱湯を注いで飲むと緩和する」、「梅干をお茶に入れて飲むと二日酔いや乗り物酔いに効く」、「梅干を潰し、額に貼りつけておくと熱が下がる」、「潰した梅干をこめかみに貼りつけておくと頭痛が治る」などの民間療法もあります。

 

特徴

梅干

梅干とは、梅の果実を塩漬けした後、日干ししたもの。

おにぎりの具や弁当に入れられるほか、梅干のみをパッキングして食べやすくした健康食品もあります。

伝統的製法で作られた梅干は酸味がかなり強く、顔をしかめなければ(いわゆる「梅干し顔」)食べられないほどで、好き嫌いがはっきりと分かれます。

海外の人に梅干を試食してもらうと「これはクレージーだ!」と涙ぐんでしまうほど、かなり強烈な食品です。

冷蔵庫などの保存技術がなかった時代は、強烈な塩分(20%前後)により梅干の保存性を高めていました。

伝統製法によって作られた梅干は保管環境が適してさえいれば、腐らず、100年前に作られたものでも全く問題なく食べることができます。

現代では、「調味梅干(梅干に砂糖や酢などを加えて塩分濃度を低くした梅干)」がスーパーにずらりと並び、家庭で梅干を漬けることは少なくなりました。

塩分濃度も6%、7%、8%など様々です。

 

梅の果実には「アミグダリン」という成分が含まれており、胃腸に入って加水分解されることで猛毒の青酸が生成されます。

アミグダリンは、特に梅の果実の「仁」に多く含まれており、大量に食べると青酸中毒に陥ります。

「梅は食うとも核(さね)食うな、中に天神寝てござる」という格言もあります。

ですが、梅の果実を漬けて「梅干」にすることでアミグダリンはあらかた消失しますので、食べてもほとんど影響がないと言われています。

 

種類

梅干

梅は、和歌山県、群馬県、福井県などが生産地です。

和歌山県は日本の梅生産量の約7割を占めています。

梅干の生産地としてもよく知られ、みなべ町や田辺市で生産される「南高梅」という品種の梅を用いた梅干は最高級品と言われます。

梅の果実の種類には「南高梅」、「白加賀」、「紅映梅」などがあります。

梅干の種類には、伝統的な製法で作られた「塩漬け」のほか、「調味梅干」があります。
「調味梅干」の中にも、「しそ梅」、「昆布梅」、「かつお梅」、「はちみつ梅」などの種類があります。

 

レシピ

梅干のおにぎり

手軽に食べられる夜食や、山登りやハイキングなどの小旅行に。

筋肉疲労に梅干のクエン酸が効果的。

おにぎり

 

白粥に梅干

食欲が無い時に。

梅干が唾液や胃液の分泌を促し、食欲を増進してくれる。

但し、胃酸過多の人は梅干の多食はやめよう。

白粥に梅干

 

ウメボシ【梅干】 「1日1粒の梅干で医者要らず」とも言われる まとめ

梅の果実は「三毒を断つ」と言われます。

梅干は「1日1粒の梅干で医者要らず」と言われます。

梅干の酸味成分であるクエン酸が、筋肉中につくられる乳酸の発生を抑え、燃焼させ、速やかな疲労回復に働きかけます。

唾液や胃液の分泌を促し、食欲不振を改善します。

猛毒の青酸生成成分「アミグダリン」が梅の果実には元から含まれていますが、梅を「梅干
に加工することにより、アミグダリンは大部分が消失するので、人体にはほとんど影響がないと言われています。

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