電車飛び込み自殺による人身事故に対する損害賠償責務の相続

京阪電車電車への飛び込み自殺は後を絶ちません。
鉄道会社の視点で見れば人身事故。
鉄道業界の隠語でいう「マグロ」です。

そう、鉄道会社は被害者となり、損害賠償請求をされるというのは聞いたことのある方も多いでしょう。
今回は電車での人身事故に対する損害賠償請求について解説してみましょう。

損害賠償請求は誰にするのか

鉄道会社は人身事故を起こした本人に対して損害賠償請求をすることになります。
ここで疑問に思われるでしょう。
電車に接触するような人身事故の場合、ほぼ100%死亡しているのですから。
そう、損害賠償請求は死亡した遺体に対して行うのです。

損害賠償はどれくらいの金額か

損害賠償

鉄道会社は電車への飛び込み自殺などで人身事故を起こしてしまった場合、電車は緊急停止します。
人身事故が起こるとすぐに警察と消防に連絡が行き、現場検証が始まります。
遺体は身元確認にも時間がかかるほどバラバラになり、みるも無残な姿となり、現場検証は長引きます。
この現場検証が終了し、電車運行の安全が確認されないと電車は発車できません。
2~3時間の運転見合わせは当たり前。
この間、電車の利用客など多くの人に迷惑をかけることになります。

ラッシュ時の人身事故の場合、賠償金額の相場は700~800万円。
平時でも400万円といわれています。

また、鉄道会社は利用客に払い戻しをしたり、他の交通手段で振り替え輸送を行ったり、余計な人件費もかさむので多くの損害がでます。
急ブレーキによる線路の損傷は必ず請求されるといいますし、車体に破損があった場合なども上乗せして賠償請求されます。

これ以外にも、利用客から損害賠償を請求される場合もあります。
人身事故を起こした電車の利用客の怪我などによる後遺障害や死亡などが発生すると更に高額になります。

2010年度の国土交通省の調べでは、首都圏の電車への飛び込み自殺などを起こした場合の影響額は平均8900万円と試算されています。

損害賠償責務は相続人が負う

遺族の方からすれば損害賠償請求といっても当人が死亡しているのだから支払う義務なんてないんじゃないの? と思うかもしれませんがそうではありません。

損害賠償責務というのは相続されるのです。
自殺者本人が負うはずだった損害賠償責務は相続人、すなわち遺族が負うことになります。
これは、過失であろうが、殺意があろうが、認知症であろうが同じです。
人身事故を引き起こした本人がどういう考えだったかは問われず、あくまでどれだけの被害が出たかということが問われるのです。

相続放棄で回避できることも

遺族からしてみれば大変です。
自殺者の死亡を悲しんでいるヒマなどないでしょう。
なにせ、数百万~数千万円の損害賠償責務を負うことになるのですから。

しかし、この損害賠償責務を回避する方法があります。
それは相続放棄です。
相続放棄すると賠償責務や借金などのマイナス資産を放棄することで支払い義務を回避できますが、持ち家や預金、保険金などのプラス資産も放棄することになるので注意が必要です。

ただ、何も知らないよりは相続放棄ということだけでも知っておいたほうが良いかもしれません。
いざとなったときには弁護士に相談するなどして他の解決策を見出せるかもしれませんから。

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