狐憑きの症状と特徴と家系|悪用した江藤幸子

狐が人に取り憑くとか化けて人を騙すという話は古くから知られています。
その中でも世界を股にかけて人を騙し、国政を悪しき方に導く「三国妖狐伝」に登場する金毛九尾の狐は有名です。

「三国妖狐伝」といってもピンと来ない方もおられるとは思いますが、天竺(インドの旧名)では、班足王(はんぞくおう)の后となり、悪事を働きます。
次に中国では、殷の紂王の后、妲己(だっき)と名乗り、様々な処刑方法を編み出し人々を混乱に導きました。
同じく中国の周の幽王(ゆうおう)の時代では、褒姒(ほうじ)と名乗って后となり、国を滅ぼしました。
さて、日本に於いてですが、狐は美女に化け、その美しさから鳥羽上皇に見初められて側女となった玉藻前という伝説があります。
しかし、陰陽師・安倍晴明の5代目の子孫にあたる安倍泰成に玉藻前の正体は九尾の狐であると見破られ、上総介広常と三浦介義純が退治に向かいます。
玉藻前が討ち取られる寸前、九尾の狐は殺生石という石に変化し、その後も人を殺し続けたといいます。

三国妖狐伝

三国妖狐伝 画:葛飾北斎 出典:ウィキペディア

狐に化かされた話は、他にも民話など多くの話が残されています。
「三国妖狐伝」の話では、狐が美女に化け、王に取り憑き、国を惑わすという方法でしたが、日本では古くから狐憑きという怪異現象があります。
狐憑きは先述した鳥羽上皇のように奇怪な行動をとったり、異常なことを口に出したりするというようなことを指します。
これが、国にとって重要な役割の鳥羽上皇を惑わしたのですから大事件となりましたが、日本にはこれ以外にも狐憑きの伝説は数多くあります。

また、狐は人前に姿をあらわすことが滅多にないので、珍しい動物であり、それ故か神格化され、恐れられてもきました。
「狐と狸の化かし合い」というように、狐は狸と比べられることもありますが、その稀に見る凛とした姿のせいか、狐は狸よりも格上に扱われることが多いのも特徴です。

今回はそんな狐憑きについてのお話です。

 

神格化した狐

狛狐狐の伝説は多岐にわたりますが、現代の私達が最も親しみ深い狐といえば、神格化された狐かもしれません。
神格化された狐といえば、全国に約2970社もあるといわれているお稲荷様を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
それもそのはず、主祭神としている神社が2970社もあることから、日本で最も信仰されている神様ともいわれています。
さらに、分祀した社を含めれば32000社というのですから、私達の最も身近な神社と言えるかもしれませんね。

稲荷神社には狐の狛犬(こまいぬ)ならぬ狛狐(こまぎつね)があることから、狐のイメージが強いのですが、実は稲荷神=狐ではありません。
実は稲荷神は、民間信仰のせいか、男性神に描かれることも、女性神に描かれることもあり、その実態はよくわかっていません。
また、狐は稲荷神の眷属とされています。

すなわち五穀豊穣をもたらす稲荷神を守護する眷属として、狐はお稲荷様のシンボルとなったのです。
これにより、狐は神の使いとされ、神聖化したようです。

また、稲荷信仰を怠ると「たたりが起こる」といいますが、これも狐による「化かされる」あるいは「取り憑かれる」といった恐ろしさからのことでしょう。
このことから狐は神の使いでありながら、恐ろしいイメージとなっていったのです。

 

狐憑き伝説

お祓い古くから日本の各地には、狐憑きの伝説が多く残されています。
奇怪な行動をとったり、考えもつかないような発言をしたり、精神が錯乱状態になるものもいます。
狐に憑かれた人は、そういった奇妙な行動をとりながら、病的に衰弱していきます。
医者に診てもらっても効果はなく、果ては内蔵を食いちぎられて命を落とすといわれています。

この狐憑きを取り祓うことを「狐を落とす」といいますが、狐落としを行うのは医者ではなく、祈祷師です。
祈祷師とひとことで言っても色々な職種があります。
神社神職のもの、まじない祈祷を専門とするもの、民間の拝み屋などがそれで、どれも特別な修行を必要とします。
私の粗祖母は「拝み屋」だったので、幼少の頃に祖母がお祓いをしていたのを憶えています。
祈祷を行って、神仏を降臨させ、人間に憑いた狐を叱り、松葉で燻して狐を追い出すといったものです。

また、腰痛、神経痛、関節炎などの慢性的な病気も狐憑きによるものと考えられるようになりました。
つまり、医術によって改善されない病は、みな狐憑きによるものだという考え方ですね。
ですから、狐落としによって病を治療するという行為は、この当時は欠かせないものだったのです。

 

狐憑きの特徴

狐憑きにあった際、どのような症状がでるのでしょうか。
また、人相や行動に特徴はあるのでしょうか。

キツネ目

狐に憑かれると狐のように細く吊り上がった眼つきになり、獲物を睨むかのようなギラギラした眼になるのが特徴です。
冗談を言っていても、眼だけが笑っておらず、いつものギラギラとして睨みを利かせるように見えるのも特徴といえるでしょう。

清潔を嫌う

毎日お風呂に入っていたはずの人が、急に入らなくなったり、綺麗に整理整頓されていた部屋が散らかるというのも狐憑きの特徴です。
狐憑きは人間の生活のような清潔な空間を嫌います。

嘘が多い

狐憑きの人は、人を騙します。
今まで以上に嘘をつき、注目を集めて人を陥れるようなことを平気でやるのも狐憑きの特徴です。

四つん這いになる

狐は動物ですから、もちろん四つん這いです。
狐憑きにあった人間は、狐と同じように四つん這いで走り回ります。
手を使わず、犬食いをしたり、何かを引っ掻いたり、毛づくろいのような行動をするのも狐憑きの特徴です。

生肉や生魚を食べる

犬食いならまだマシですが、魚を生のまま噛み付いたり、生肉を食べるようになると重症といえます。
動物的な感覚になるのですから、火を通したものよりも生肉を好むようになるのも狐憑きの特徴です。

頻繁に感情が変わる

狐憑きの人に多く見られる特徴は、ギラギラとした眼つきと言いましたが、怒りの表情だけではありません。
狐憑きは感情の起伏が激しいので、急に笑いだしたかと思うと暴れだしたり、また泣き出したりと、感情の変化が頻繁に起こるのも特徴です。

憎悪

狐憑きの表情の奥底にあるのは憎悪です。
他人を憎み、その環状を強く表します。

家系による憑きもの筋

狐憑きが多い家系があるといいます。
日本でも一部の地域では、狐憑きは家系によって起こると考えられてきました。
身内が狐に取り憑かれることで、裕福になる家が多く、しばしば他人に狐を憑けて財を奪ったりすることから忌み嫌われる存在です。
こういった家系を憑きもの筋(つきものすじ)と呼びます。

 

狐憑きの正体

狐憑きの特徴はわかりましたが、いったい狐憑きとは何に取り憑かれているのでしょうか。
その正体を探ってみたいと思います。

神の眷属

狐は稲荷神の使いとされており、これを眷属と呼びます。
眷属は神の使いであり、信仰の対象ともなります。
しかし、眷属でありながら獣の心が抜けきれていない狐が自分の力を誇示するため、眷属から落ち人に取り憑く狐憑きとなったといいます。

動物霊

日本では、狐、蛇、蜘蛛などは信仰と恐れの両方を生み出す霊的な存在とされています。
こういった動物霊の中には、人間の体を住居とし、魂を蝕むことで繁殖しようとする恐ろしい霊力を持ったものもいます。
これが、狐憑きの正体ともいわれています。

恨みや嫉妬の霊

普通人は動物霊にはなりませんが、強い恨みや嫉妬を抱いたまま、無念にも亡くなった霊が集合した場合、人の霊も動物霊のように人間の体に住み着きます。
これも魂を蝕むことで繁殖しようとする恐ろしい霊力を持ち、こういった霊を総称して「狐」と呼ぶことがあります。
狐憑きの症状がでる人が多い家系(憑きもの筋)では、この霊による仕業といわれています。

 

悪用される狐落とし

しかし、狐落としが悲劇を呼ぶこともありました。
昭和62年、自称祈祷師の女性が「首が痛い」という男性に狐落としを行う際、祈祷師の女性の兄と一緒に男性を押さえつけ、足で踏みつけるという暴行を加え、死亡させた事件が起こります。
特に有名なのが「福島悪魔払い殺人事件」です。

福島悪魔払い殺人事件

この狐落としによる暴行事件の中でも、凶悪なのが「福島悪魔払い殺人事件」です。
この事件により、「狐憑き」や「狐落とし」という言葉が再び注目されることになりました。

江藤幸子福島県須賀川市小作田の江藤幸子は、化粧品のセールスをしていたが、夫が腰痛により塗装業をやめてからは、収入が途絶えて困っていました。
借金により新築購入したばかりの家を手放す寸前となったことを切っ掛けに江藤夫妻は、解決できない金銭問題を抱えながら岐阜の宗教団体へ入信します。
江藤夫婦は入信した宗教団体の名前を勝手に使い、拝み屋を始めるが、このことが宗教団体本部にバレて破門になりました。

仕事を辞めた夫はギャンブルに走り、平成4年頃には失踪してしまいます。
この頃から、江藤幸子は拝み屋としての評判が高くなり、遠方からも押し寄せる人気祈祷師となっていくのです。
最初は、太鼓を叩き、祈祷することで魂を浄化させるといったものだったのだが、徐々に催眠術のような手法も取り入れていったといいます。

平成6年には、信者ら10人ほどと同居を始めることとなります。
この信者は、沢田家2人、太田家3人、永田家2人、中村昭彦、横田ふみ子ら3家族と2名の9人。
この同居が悲劇を招くことになります。

嫉妬から起こった偽の狐落とし

江藤幸子は同居人である信者と生活を始める中で、元自衛官の信者・中村昭彦(21歳仮名)と愛人関係となった。
ここで、江藤幸子は鏡石町から来ていた同じく同居人の沢田あき子(56歳仮名)が、江藤の愛人の中村に色目を使ったと思いこんでしまいます。
江藤幸子は、あき子への嫉妬から「悪い狐が憑いている」といって、あき子の夫である沢田和夫(45歳仮名)を呼びつけ、二人であき子を太鼓バチで叩いて死亡させてしまったのです。

その後、同居する太田伸一(56歳仮名)、その妻のこずえ(48歳仮名)、その長女のよしえ(19歳仮名)ら太田一家と無職の永田健二(43歳仮名)とその妻・信子(仮名)が、江藤幸子の狐落としに疑問をもつようになります。
また、江藤幸子は同居人に度々、借金の申し出をしていたようで、信仰心に疑問を持ち始めた彼らは断ったといいます。
これに腹を立てた江藤幸子は、この太田一家3人と永田を「狐落とし」の儀式により死亡させたのです。

一連の「狐落とし」の儀式に参加した永田の妻・信子(仮名)は、夫と同じく儀式により数人から暴行を受けて入院していました。
そこへ、永田の父親が「6月頃から息子が行方不明になっている」と須賀川署に捜索願を出したのが事件発覚への第一歩となりました。

事件の発覚

警察署員が永田の居所を捜査していたところ、永田の妻である信子が入院していることがわかります。
この信子に事情を聞いてみたところ、夫婦揃って祈祷師・江藤幸子(当時47歳)宅に同居していたことがわかり、江藤宅を傷害容疑で家宅捜索しました。

警察の家宅捜査では、江藤宅の1階八畳間で、男性2人、女性4人の計6つの遺体を発見。
遺体は布団入れられ、腐乱し、一部はミイラ化していたといいます。
遺体に関して信者らは、「悪臭が消えたら蘇生する」と信じて寝かせていたというのです。

遺体となっていたのは以下6名

  • 沢田あき子(56歳仮名)
  • 太田伸一(56歳仮名)
  • 太田の妻・こずえ(48歳仮名)
  • 太田の長女・よしえ(19歳仮名)
  • 永田健二(43歳仮名)
  • 身元不明(27歳)

警察は、殺害に関与したとみられる江藤幸子(47歳)、中村昭彦(21歳仮名)、沢田和夫(45歳仮名)を緊急逮捕した。
後に入院中であった永田信子(仮名)も暴行に関与していたとして逮捕された。
また、身元不明の遺体は後日、滝根町の元店員・横田ふみ子(27歳仮名)ということがわかった。
横田ふみ子さんはゴールデンウィークから行方不明となっていた。

  • 江藤幸子:死刑
  • 中村昭彦:無期懲役
  • 沢田和夫:懲役18年
  • 永田信子:無期懲役

平成24年9月27日、江藤幸子死刑囚の死刑が執行されました。

現在の江藤幸子宅の様子

 

狐憑きの症状と特徴と家系|悪用した江藤幸子 まとめ

このように狐は、神聖視されながらも、恐れられる存在でもありました。
狐憑きは、現代では迷信と考えられているようですが、古くから伝説が残されているのは事実です。
迷信といいながらも、大抵の人は狐を恐れ、時には神聖視します。

ただ、狐憑きを偽って信者を殺害するというようなことが今後起こらないことを願います。
そうなってしまっては、ただの殺人事件ですから。

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